
田や畑が続くのどかな風景。高い建物などなく、どこまでも広がる青い空。そこに気高く、すっくと立っているのは、光洋製瓦の煙突。工場の裏では小さな沼が静かに水を抱いています。サクラ氏の背後の扉は開け放たれ、外の景色がまるで一枚の絵のように切り取られています。蓮の葉が風にそよぎ、夏の光を浴びて。遠くの山並みが、稜線を連ねて、そっと佇んで。この場所の雰囲気は、どんなに作りこんだ舞台でも再現できない。空間に、オーラを感じる。これ以上の舞台はない。屋外へ場所を移し、撮影は進みます。隣家の庭に育つ、バナナの木が背景です。ここでのモデルは、町内の神南中学校へ通う少年たち。瓦を頭上に掲げます。風景にしっくり溶け込んでいるのは、地元で生まれ育っているから? 容赦なく降り注ぐ陽射しを受けとめる少年たちを見つめていると、そこにもまた物語が見えてくるようで不思議。

もうひとりのカメラマン・セオヒロアキさんが、光洋製瓦の職人らをモデルに撮影を始めました。長尾茂勝さん、正城 (まさき)健一さん、笹田賢治さん、アルバイトの兵庫県立大生澤田昇平くんと神地泰宏くんもいます。“甍の波”を連想させる隊列で、瓦を頭の上に掲げて。現場から戻ってきたばかりで、作業服は汗とホコリでどろどろ。なのに、なんてかっこいいんだろう。瓦の持ちかた、表情。ちょっとしたポーズから“職人気質”を引き出せるとは、セオさん、さすがです。撮影が進むにつれて、みんなの顔が歪んできました。「死んでしまうがなー」。中腰でふんばる長尾さんが辛そうです。何カットか撮って、セオさんが「はい、お疲れさまでしたー」。みんなはやれやれ…。セオさんがもうひとこと「休憩でーす」。一同「えっ?」「終わりとちゃうんかいなー」。
事務所の前では、バーベキューの準備が着々と進んでいます。炭もいい具合に熾り、肉もOK、野菜もOK! もちろんビールも冷えてます。光洋製瓦のスタッフの皆さん、きょうは裏方に徹していてほんとにお疲れさまです。 どんどん肉を焼く笹田社長。普段着に戻った少年がわらわらと集まってきました。「さあみんな、どんどん食べてよー」。小林さんもサクラ氏もやってきて、さっそく缶ビールをぷしゅっ。姫路フィルムコミッションから来ている菅原くん(小6)は「瓦を作るって聞いてて…来たらモデルだったからびっくりした」。芦田くん(中1)は「最初はモデルになるの嫌やったけど、やってみてもええかなー、と思って」。学校の友だちに、写真見られたらどうするの?「僕じゃないって言う」。ふたりともきっぱり。笹田社長が「どうぞー」と小林さんのお皿にお肉をどさっ。小林さんがふたりに「これ取りなよ」。「あ、ありがとうございますー」。…全部取るのか少年!
夕暮れ時のバーベキュー。みんなとてもいい顔をしていて、なんて素敵で贅沢な時間なんだろうと思いました。後日、サクラ氏が笹田社長に書き送った言葉です。最後にみんなで撮った写真、そこには、職人やスタッフに混じって満面の笑みをたたえたサクラ氏の“いい顔”がありました。



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